なぜ過熱水蒸気にハマッタか
なぜ、過熱水蒸気にはまったかというと、広島にある「”I”商会」という会社から
過熱水蒸気を使って焙煎したコーヒーをもらったのが始まりです。
そのコーヒーは、煎りむらもすごく豆もはぜた感じもなく、まったくだめな感じでした。
(よそのコーヒー屋さんにもいわれたらしい)
ただ、豆を切ってみると豆の水分だけはきれいにぬけているなぁと感じました。
(豆の水分の抜き方のうまいかへたかで焙煎は決まるといっても過言ではないとおもっています)
そして、「”I”商会」からちょっとした過熱水蒸気に関する資料をもらいました。
それを読んでいてもしかしたら・・・と思いました。
それは、過熱水蒸気の持っているいくつかの特性でした。
乾燥逆転温度・・・170度以上に達した場合、乾燥空気よりも湿度の高い空気のほうが乾燥能力がある
膜凝縮伝熱・・・・乾燥空気よりも湿度の高い空気のほうが10倍ほど熱伝達能力がある
過熱水蒸気を使うと成分が壊れにくく飛びにくい。
などの特性があるのです。
過熱水蒸気の特性を焙煎という作業に当てはめてみるとけっこう類似性があることに気づいたのです。
そして、直感として感じたのが、焙煎機の内部の湿度の変化なのです。
通常焙煎という作業では、豆を投入してからしばらくの間は排気を絞って釜の中の湿度を上げるようにします。
(これを「蒸らし」といいます)
豆が投入されて豆の温度が下死点に達したころの排気温がちょうど乾燥逆転温度と一致するのです。
つまり、ぼくたちコーヒー屋というのは過熱水蒸気なんてものを知らなくても
過熱水蒸気の特性をなんとなく使っていたということなんです。
普通に焙煎する場合などは、釜の内部の湿度を上げる要因としてはガスを燃焼した時の水と
空気を取り込んだときの湿度と豆からでる水分だけだったわけです。
それを強制的に水蒸気を送り込むことにより水の抜けにくい豆の蒸らしなんかに効果があるんじゃあないかと考えました。
焙煎方式による弱点
熱風式
この方式は、大量の熱風をボイラーでつくっておきそれを豆のはいったドラムに送り込み焙煎する方式です。
豆一粒にたいしてまわりにある熱風の温度は低く豆の表面から熱が入り込もうとする力は弱いが、変わりに
大量の熱風でそれをカバーするようになっています。
熱風の温度が低ければ焦げることが少なくで失敗の少ない方法といえます。
そのかわりに、大量の熱風を送り込むために成分が飛びやすい欠点も同時に持っているといえます。
湿度という考え方では釜内部の湿度は上げにくく成分のロスが多くなる可能性をもつ方法といえます。
ですから、このタイプの焙煎機の特長は飲みやすい無難なコーヒーをつくるのには向いています。
(飲みやすいんだからいいじゃん!・・そのとーーり)
どちらかというと、コーヒーを商売として考えている商売屋さん向けの焙煎方法といえます。
直火式
この方式は、欠点が多いです。
バーナーの炎を直接豆に当てるために焦げやすいのです。
排気を強くすれば、ドラム内の温度差が大きくなり煎りむらの原因にもなります。
ただし、この方法には唯一いい部分があるのです。
それは、熱風式と違い成分を残しやすいのです。
炎は、高温の熱風と考えると豆の表面から入り込もうとする力は強いのです。
(温度のはいりやすさは、温度差に依存するから・・あたりまえですが)
つまり、排気を弱くしても豆に熱を送り込むことができることになります。
それと・・・「蒸らし」という独特の手法を使って釜内の湿度を上げることができるのです。
ただし、この排気の操作を誤るとコーヒー豆の水が逆に抜けなかったり本来起こるはずの化学変化がおきなかったりして
コーヒー豆がめちゃくちゃになる可能性を秘めているわけです。
昔から、焙煎が職人技といわれたのはこのためです。
非常にマニア向けで味で勝負するコーヒー屋さん向けの焙煎方法といえます。
今回研究している過熱水蒸気はどちらかというと直火式の方を中心に研究しました。
なぜかというと理由は簡単で直火式の焙煎機しかうちの店にはないからです。
(非常にまぬけな理由だなぁ・・・・)